渋谷のレコード屋や洋服屋、飲食店など、宇田川町を中心に個人経営の経営者を応援してくれていた唯一の「不動産屋さんの阿部さん」が亡くなられた。突然だった。
こんな事をブログなどに書くのは、どうかとも思ったが・・・そしてこの訃報を、お世話になった方で、まだ知らない方々の為に知らせるためにこのブログを書いたのだ。
お世話になった方を集めて皆でお別れ会をやろうか、皆で墓参りに行く等色々考えたが、それも諸事情で難しいということで、ブログに書き記すことにした。
何故そこまで書きたいのか。
それは、この方が過去20年に渡る、渋谷のレコード屋ブーム、そして日本のヒップホップのシーンにも影響していたと言っても過言ではない、影の立役者だからだ。宇田川町で商いをしているほとんどのレコード屋などの経営者が、そう頷くと思う。
この方がいなかったらこのブームは無かった。あの店もこの店も、阿部さんの紹介。過去20年間、数々の有名な方々も、あそこの店もこちらの店も、「阿部さん」を通して物件を契約していた。そして多くの経営者がお店を立ち上げたばかりで資金繰りに苦しい時の敷金や保証金の交渉を、大家さんとの間に入って柔軟に進めてくれたり、トラブルの際にも的確にアドバイスを頂いたと聞く。
阿部さんは一見強面で、普通の会社員には見えなかった。近寄りがたい感じではあったが、実は本当に温かい方であった。
自分も18年前、最初のお店の契約でご尽力頂いた・・・某店とその店舗の権利を争うことになり、まだ資金の無い私共に有利な計らいをしてくれたのだった。その時も「若い人が頑張らないといけないよ!」と仰ってくれたのだった。
それから18年経過し・・・今回の新店舗の契約でも本当に良くして頂いた。契約書を交わす際に、「君みたいな若くてやる気のある経営者が頑張らないと渋谷がチェーン店だらけでつまらない街になっちゃうよ。頑張ってね!」と応援して頂いた事がまだ脳裏に焼き付いている。
不動産屋は、表には全く出てこない、ある意味「裏方」。
しかし世界中どこでも、街が面白くなっていく時、必ず不動産屋の力があるはずだ。
物件を契約する際は必ず審査があり、その不動産屋の「ここにはこの店は契約させない方がいい」の一言が契約を左右するのである。 不動産屋のさじ加減なのだ。そして、ある意味街のデザイナーなのだ。
しかし不動産屋は、大家からは安全で金払いの良い借手を探してくれと言われ、借手側からは、なるべく安くて良い条件で、と突き上げられ板挟みの状態ではあるが、ほとんどの場合、大家寄りの不動産屋が多いのは、まぁ仕方が無い。 阿部さんは時に借手の立場を理解してくれて、大家に交渉してくれた。若い経営者を応援し、その将来性だけを信じて大家を説得してくれたのだ。
こんな阿部さんがいなくなるのは本当に悲しい。
今でも信じられない。今日にもオルガン坂あたりでバッタリ会い、「あ、どうも!儲かってる??」と声をかけられそうだ。
そして日本中が大手のチェーン店だらけになってしまったのは、こんな義侠心溢れる不動産屋さんが減ったからかもしれない。
阿部さんは宇田川町にレコード屋や洋服屋を集めて、若者が集う活気ある街をデザインしていたのかもしれない。ギネスブックに「世界一レコード屋の多い街」と登録された事は知っていたのだろうか。この記録も阿部さんのご尽力があったからこそである。もし、これを知らずに旅立たれたとしたら、非常に残念である。
ただ、現在はそのギネスの記録も風前の灯だ。「渋谷レコード村」は現在過疎化が進んでいるが、この街を立て直すように頑張って行きたいと思う。
阿部さん、安らかにお休み下さい。
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